よろず夜話

軍事や自衛隊を多めにしつつ色々な話をするブログ。話の正確性は6割ほど、力を抜いた話ができるようにしたいです。アイコンは陸上自衛隊HPより引用

海自の中東派遣の意味

はてなブックマークってコメント機能がついてるんですね。ずっとブックマークするだけだと思っていたのでいくらかコメントに目を通せていないです、ごめんなさい。

 

さてコロナウイルスの拡大で影が薄くなり、自分自体そんなに目新しいことをする訳でもなかったので大して興味がなかったので超今更ですが、海上自衛隊護衛艦の中東派遣について話そうかなと思います。

www3.nhk.or.jp

今回作ろうと思ったきっかけとなった記事なのですが、NHKらしく他のマスメディアよりも賛成・反対が載っていたと言う感じでかなり好感を持てるものでした。今回はその記事の内容に即していこうと思います。

 

今回の自衛隊の任務とは?

中東派遣における自衛隊の任務は情報収集とされています。自衛隊の情報取集任務は法律的には防衛省設置法4条1項18号によるものとされます。気をつけなければならないのは今回の任務は防衛省設置法であり、自衛隊法に基づくものではないということです。ちなみに任務の場所は実際に戦闘になる可能性が高いホルムズ海峡にペルシア湾ではなく、オマーン湾アラビア海北部などの比較的イランから遠い地域になります。

>防衛省・自衛隊:中東地域における日本関係船舶の安全確保に関する政府の取組について

 

www.google.co.jp

 

派遣される装備

今回の中東派遣には護衛艦一隻、哨戒機2機といった構成になっています。この内容は各新聞社が報じています。

www.asahi.com

今回派遣された哨戒機の説明をすると使われているのはP-3Cで現在配備が進んでいるP-1ではありません。これは確かな情報元が見つけられていないのでなんともですが、P-1の機体の大きさが全面的にP-3Cよりも一回り大きいことから拠点としているジブチのハンガーに入らないためではないかと言われています。

またP-1はP-3Cよりも機材等は一新されていますが、相手はその機材を使う潜水艦や大型の艦艇ではないことため無理にP-1を持っていく必要はないと判断されたのかもしれません。

とは言え、P-3C自体は20ヶ国で採用された哨戒機にしては多く製造された名機といって差し支えない機体であり、タンカーを攻撃している組織が通常のテロリストよりも重武装である可能性も考えて信頼性のより高い機体を使うことは理にかなっていると考えていいと思います。

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wikipediaより P-3C

 

護衛艦に関しましては、派遣第一弾としてはたかなみ型護衛艦の「たかなみ」が使用されます。たかなみは2003年に自衛隊に配備された護衛艦で年数だけで言えばそこそこに年数が経っているもののむらさめ型護衛艦の改良型として建造され。護衛艦隊の主力となる艦船の一つとなっています。今回の派遣では艦橋に防弾ガラスを取り付け、船体には非殺傷兵器となるLRAD(音響兵器)を使用します。LRAD自体はイラク戦争後の駐留米軍に採用されたことをきっかけに世界中の軍隊や警察組織にて運用されています。当然ながら自衛隊でも採用されていて、ソマリア派遣部隊や邦人救助部隊となる中央即応連隊が使用している実績のある装備となっています。

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wikipediaより たかなみ型護衛艦「たかなみ」

 

中東派遣の不安と個人的な所感

つらつら事実のみ書いていても仕方ないので、少し個人的な意見を書きたいと思います。その前に、自衛隊の今回の派遣に対する不安と批判を書こうと思います。

今回の派遣ではイランとの関係悪化の話が出ています。また、米国と協同した行動は中東からの反感を買う可能性があるのではないか?ということです。

また、批判としては何かの正式的な任務ではなく防衛省設置法による情報収集を活動根拠とするのは法律と国会を軽視しているといった指摘です。

 

まずは不安の方から、イランとの関係悪化の可能性ですが今回の派遣のきっかけとなった国華産業含めた多国籍の企業のタンカーへの爆破テロであり、この攻撃は米国含めた有志連合はイランによるものとしてますが、イランは一貫して米国への非難をするもののテロへの関与は否定しています。

つまり、イランへの直接的な敵対行動になるわけでもなく、期間内でイランが何もしないのであればイランはある意味で潔白を得ることができるのでイランとしては友好国による情報収集は困るものではありません。また、上記でアラビア海のマップを掲載していますがイランからは正直かなり遠いです。なんかあっても急行するには時間かかる上に、自衛艦は対地攻撃能力が巡航ミサイルがないこともあり弱いので特に脅威と認識されにくいと思われます。

他国からの認識はイランのことが好きな国よりも宗教上の理由で敵対している国のが多いので、イランの監視任務は他の中東各国にはありがたいものであります。また、国民感情の面ですがイラク派遣が理由に中東での対日感情が悪化したという話はあまり聞きません。仮に起きるとすればイランの国民感情が悪化する可能性ですが、これもあったとしても世論に影響を与える可能性は低いのではないかと考えます。

というのも、彼の国は情報統制がかなり厳しいものがあります。日本に対する感情の悪化によるデモを扇動しても、日本自体はイラン問題のプレイヤーではないので反日感情を煽る意味がありません。

扇動したところで仲裁役、中立的な存在を失うだけでイラン側にメリットがないわけです。ということは、日本のことを必要以上に煽る流れを政府が作る可能性は少なく、米国みたいに巨大な怒りがぶつけられないと思います。また、今回の中東派遣はインドや韓国も日本と同様に独自派遣を表明しており、怒りの矛先はあってもかなり分裂すると考えられます。

 

注:ちょっと政治くさい内容になります

次に批判となりますが、できることであれば法律的な強い根拠があった方が良いというのは事実だと思います。問題は法律にして出来上がるまでの時間とできてからの法案審議の時間です。法律作成は残念ながら本来数年かけて行うものであり、また法的安定性の問題からも去年の臨時国会の間に成立させられる法案を提出することは安全ではありません。まともな条文になることなく提出され、提出される前に内閣法制局に差し戻されたらそれでおしまいになるやもしれなく、仮に提出しても野党から対決法案として見られた場合には早期の成立は困難になりうるものと予想されます。

 

ただし、2001年のテロ特措法はわずか一ヶ月未満で法案可決しています。それなので特措法にすることで早期の法案提出が可能であったということは付け加えておきます。

一方で活動場所は基本的に公海上になり、テロ特措法のように他国軍と直接的な協同はしないので法律を通さなかったこともある程度の論理性はあります。なのでここら辺は政権の行政運用の好みの問題かと思います。できることなら今年の通常国会臨時国会で延長される際には追加の根拠法が提出あればいいんですけどね。法律にするにしても運用予定が半年なので作るメリットが薄いんだろうなといった感じでしょうか。

 

国内や外交は色々ありますが、実際の現場は終始安全で終わり自衛官が無事帰国できることを願うばかりです。

水陸機動団 北海道配備のメリット

ブログを編集画面ではなく、普通の画面で見るとサイズでかいのはとことんでかくて面喰らうことに気づきました。とりあえず、サイズの調整ってどうすればいいんでしょうね?

 

さて、今回はタイトルのように水陸機動団が北海道にくるかも?という話です。

www.sankei.com

配信元の記事では沖縄本島では政府への反発が強いこともあって実現が難しく、理解の得やすい北海道に部隊を置きたいといった感じのものでした。

実は水陸機動団の前身の西部方面普通科連隊でも沖縄に部隊配備の話が出ていましたが、同じように政府への反発が強いと言う事があり実際には長崎の相浦駐屯地に居を構えることになりました。それから20年ほど経ちましたが、状況は大きく好転してはいないといったところでしょうか。そんなこともあって北海道と言う感じでしょう。

 

 

北海道に置くメリットと必要性

北海道への配備は記事にないこと含め色々と良い事があります。

一つ目は演習場と演習部隊の点です。

記事にもあるように演習場が他の地域よりも広く、多く存在するということです。北海道は日本最大の演習場である矢臼別演習場や陸自唯一の浜大樹訓練場、札幌の近くに存在する北海道大演習場など演習場に恵まれています。また、北海道は他の地域と異なり機甲部隊や機械化歩兵が充足されており、札幌を防衛する第七師団は日本で唯一の機甲師団となっております。いずれの部隊も演習の対抗部隊としては近隣諸国の揚陸部隊の機甲部隊役をやるのに的確であると思われます。あまり注目されませんが、ロシアは海軍歩兵にT-80・T-90や、BMP-3のような戦車やIFVが配備されており、中国も15式戦車や11式装輪戦車、05式水陸両用歩兵戦闘車、IFVなどを装備している機械化部隊となっており、このような相手を再現するのに他の地域の部隊では難しい現実があります。

 

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wikipediaより T-90

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wikipediaより 05式水陸両用歩兵戦闘車(ZBD-05)

 

揚陸作戦部隊の機械化は世界最大の揚陸作戦能力のある米海兵隊も高度に機械化されているので、機械化部隊が演習相手を機械化された部隊がするのは特殊なケースではなく、常にありえる脅威に対抗するには大切だと思われます。ちなみに、海兵隊はヘリに恵まれており、今後の近隣諸国の舞台もヘリボン能力を上げていくと思われます。ロシア海軍歩兵なんかがまさにその能力を歩兵の個人能力として求めています。一方、中国は未だにヘリの配備が間に合ってないですがZ-20の配備が状況を変えていくと思われます。実のところ北海道はその部分でも恵まれてまして、旧式のAH-1SやUH-1Jが中心になりますがヘリ部隊が関東以外ではかなり恵まれている方だと思います。北海道はつまるところ、野戦をするには一番良い立地であるということです。

 

二つ目としては、北海道の離島です。あまり意識されませんが北海道は国交省の発表では508もの島が北方領土含めて存在します。ロシアはウクライナ危機で立ち消えしましたがフランスのミストラル級の導入を進め、現在も揚陸艦配備を進め2018年にイワン・グレン級を配備しました。

jp.sputniknews.com

イワン・グレン級の二番艦は太平洋艦隊に配備されることが決定されており、太平洋におけるロシア海軍のプレゼンスが上がると考えてみて間違いないと思われます。それ以外にもロシアは中国よりもヘリ運用能力が高く、北方四島に軍事施設が存在することからも対露関係の悪化によってロシアが行動に出た際に離島が占領される能力的な可能性は高いと言えます。

他にもロシアは自国の内部で不満を持つ少数民族や反政府活動家が存在し、過激派がロシアの主権が及ばない我が国で拠点を持つこと、またはそれを利用したハイブリッド戦略が発生することも考えられます。

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wikipediaより イヴァン・グレン級

北海道には奥尻島含め、離島に住んでいる人がいるのでそこに住む住民の保護の必要性があります。北海道の海は他よりも冷たいので特殊な訓練も必要なのではないかと思われます。北海道に対処できる部隊がいるのは時間が大きな鍵になる現代戦において、事態の早急な対処ができるので大きなアドヴァンテージとなれます。

 

三つ目は地方への支援策です。もともと北海道は自衛隊の部隊が多く存在していましたが、冷戦の崩壊によって自衛隊の規模が縮小され続け、少子化、過疎化なども合間って人口減少が著しい地方には自衛隊は大切な存在となっております。どのくらい重要視されているかというと、町長や議員が上京して陳情するほどです。

6.04.04駐屯地誘致と部隊の移駐

今回の自衛隊増強はそういった自治体にとって要望を叶え、地方の支援、創生に役立つ施策となるわけです。

 

水陸機動団の増強は機動力を高め、最終的には米海兵隊のような緊急展開部隊的な総合部隊になれば非常に扱いやすいものになるとは思いますが、一般部隊がないがしろにされるようなことは避けてほしくはあるなと思います。できることであれば、北海道だけでも総合的な戦力を保持していてほしいと思うところです。

 

 


【陸上自衛隊公式】最新広報用映像 新たな次元へ進化する陸上自衛隊 〜多次元統合防衛力の構築に向けて〜 THE EVEOLUTION OF JGSDF INTO NEW DIMENSIONS

 

 

J GROUND EX No.6 (ジェイ グランド)

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NieR: Automataの人類会議と機械生命体

戻って来たは良いものの、書くことが欠落してネタに少し困る状態になっています。

ソニーの車なんか少し面白そうではあったんですが、最近車の方はやや追いきれてないのでいつも以上に適当なことを言いそうなので今回は見送ります。追記:機械生命体の字間違えてました。機会生命体ってなんだろ、概念生物になりそう。

 

さて、今回話そうと思うのはもう大昔に旬はすぎたNieR: Automataのお話。

非常に多くの人が話していることだとは思うので今更なのですが、考察ブログの有名どこ見てなかったことを書こうとは思います。ちなみにネタバレがあるかもしれないのでネタバレが嫌な人はブラウザバックをお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで、話していきます。作中で気になったのはアンドロイド軍(ヨルハ部隊)に対して機械生命体は武装が貧弱であり、本体の性能もアンドロイドを下回り、唯一の強みは数だけといった感じです。事実、主人公の2Bと9S以外の脱走アンドロイドは機械生命体よりも硬く、武装も強いので主人公だけが特段強い個体と言う訳でもなさそうです。

 

ただし、機械生命体の全部が弱い訳でもなく巨大種やよくわかんない魚型のバケモノは一般的なヨルハタイプのアンドロイドより強いといった感じのようです。しかしながら、魚は失敗兵器、洋上プラント型の巨大種も中盤以降は空気と機械生命体の主力兵器になれているかは疑問な状態です。

 

さて、ここで気になる事が出てくる訳です。性能はアンドロイドの方が上でやられている。数も亡骸の数を見るにそんなにアンドロイドも少ない訳でもない。コアを利用した自爆は強大な威力を持つ故にコアのみを利用した戦略兵器を持つことも可能な訳です。(材料が敵のコアなので量産できるかは謎ですが)

そんな軍隊が大した領土を持つことすらできずに何千年も戦い続けるものでしょうか?ちょっと考えにくいと思います。レジスタンス頼みなのも変なところです。きちんとした橋頭堡を確保せずに、部隊を集中的に運用することも疑問があります。資源も軍艦を作り、都市を修復・再生しているのですから資源不足で何もできないということは考えにくいことなので、他に原因があると思われます。

 

そうなると、一つの可能性が出てきます。それはアンドロイドを統括する人類会議と機械生命体は裏で繋がっていたと言うことです。

 

理由は諸々あるのですが、ヨルハ部隊は計画の最終段階で機械生命体の論理ウイルスにかかって全滅するといったものです。なぜそんな無意味なことをしなければならなかったのでしょうか?最初からの計画である以上、2B,9Sが原因ということでもないようですし、真珠湾降下作戦での論理ウイルスの脆弱性が問題となってたのですがその対策のためにといった感じでもないのです。まず、先行型が持つ問題を根本的に解決することなく量産していることにも疑問が出ます。

 

そして、後半になると宇宙ステーションは爆破されますが人類会議のサーバそのものは破壊されていないです。(計画通りなので当然ではあるんですが)

完全勝利を狙える戦力を持ちながらも何もしないどころか敵に与する行動をとり、一定の勢力を地上で保とうとすることもしないのは機械生命体の排除とアンドロイドの勝利からも遠いものですし、作中でも工場の破壊工作をしないなどの変な行動がアンドロイド側に見られます。

 

事の真相はもしかすると作中に語られていたのを自分が忘れているだけかもしれないですし、どっかの生放送で発言しているかもなので自信がある訳ではないですが、多くの核心は謎のままです。人類会議のAIが何を目的に戦争継続をしているのか知る機会があれば2Bたちを襲った悲劇の意味を見いだせるのかもしれません。また何か思う事があればこの話はしようかなと思います。

 

ニーア オートマタ ゲーム オブ ザ ヨルハ エディション - PS4

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MRJ(三菱スペースジェット)はどうなるか

忙しい期間がなんとかひと段落したためにブログを再開しようと思います。具体的にいつまで忙しいか分からなかったためにお知らせすることなく、ブログ更新を止めていてすみませんでした。

 

さて今回はなかなか良いニュースが見つからなかったので、少し軍事から離れて民間旅客機のMRJ、現在三菱スペース・ジェットと呼ばれています。最近の日本の製品って名前ダサくするのが流行りなんですかね?

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wikipediaより MRJ

 

今年で本来竣工する予定でしたが、今年の一月に6度目の延期となると報じられており、2020年の導入は絶望的になっています。

mainichi.jp

 

正直なところ、初期の納入から10年近く延期することは最近の航空業界は延期が多いものの長い部類になると思います。例えば、延期やら不調で有名となったB787ですが納入までの延期期間は三年ほどであり、その後の飛行停止も半年から一年の間に落ち着いています。軍用機になるもののエアバスのA400Mも遅延が有名ですが、これも納入まで4年延期となっています。

 

この長い延期で度々耳にするのは三菱は国に守られていた親方日の丸であるから失敗した。国が支援するようなものは国から補助金をもらうためであったなど言われます。

実のところ三菱重工は造船部門が伸び悩み、原発事故以降は原発の原子炉の製造が大幅に減速するなどやや厳しい状態ではあるものの、グループには三菱UFJ銀行を筆頭に巨大な企業グループを形成していることから危機意識が弱いのではないかといった批判も目立ちます。

 

しかしながら、同重工は核融合発電の国際的な計画の一部に参加して技術力を誇示、赤字気味な造船部門も今治造船からの委託業務に就いたり、長崎造船所を売却するなど会社の危機意識が欠けているといった指摘は必ずしも正しいとは思えません。もちろん航空機の胴体の製造などのちょっとした実績からくる慢心はあったと思いますが、この危機意識の部分がMRJ開発の障壁になったと結論づけるのは早計だと考えます。

また、補助金の話も経産省からもらった補助金20億円に対して、開発費は少なくとも3300億円となっており、補助金をもらうメリットが皆無どころか当初試算でも1200億円と補助金は雀の涙くらいでしかありません。

www.asahi.com

 

では何が問題となったのか?なんの根拠もありませんが、胴体や翼といったパーツがきちんと作れても全体をきちんと作るノウハウが無く、求められるレベルの差異に気づけなかったのではないかということです。

 

三菱は以前から国産の航空機を作っています。MH2000がその代表ともいえます。このMH2000はエンジンからガワまで全て自社で設計したものを載せるという意欲作でしたが、大口顧客が出ることはなく7機の生産で終わりました。

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wikipediaより MH2000A

他にも各種戦闘機などを生産してきましたが、これらはどれも旅客機と比べると小型で大型機の生産は丸々全てを請け負ったことは実は少なかったりします。無論、現在の川崎重工のP-1・C-2の分担生産はしてますが、やはりこれも一から作ったわけではありません。やはりノウハウが足りない訳です。

 

サッカーで例えるなら、リフティングやランニングといった基礎練は積んできたわけですし、基礎練と並行してバレーやバスケなんかもしているもののサッカーの試合そのものはほとんどやってこなかった訳です。ただし、バレーやバスケは求められるレベルには達しているので持ち前の才能と基礎力でなんとか乗り切ろうとしたがダメだった、と言った感じでしょうか。

 

スポーツに限らず、人間何かしらこういった経験はあるのではないでしょうか。それが企業レベルで発生したことが現在まで続く延期の正体なのではないでしょうか。特に三菱は米国兵器のライセンス生産ボーイングからパーツ生産の能力を評価されていたことが慢心に拍車を掛けたのだと思います。

www.mhi.com

 

もちろん、この部分を指摘するメディアは存在しましたが他部門が損失を出している状況ゆえにただの企業体質の問題とされることも多かった訳です。三菱からすれば得意分野で評価されていると思っていた分野の一つであったのでショックではあったと思います。

 

理由は他にも航空産業は現在のところ中型のリージョナルジェットクラスですとカナダのボンバルディア(現在三菱航空機の子会社)とブラジルのエンブラエルの寡占化が進んでいる分野であり、ここでシェアを握るには他の2社よりも革新的でなければならず、これが航空機製造に慣れない三菱にとってはプレッシャーであったと考えられます。なぜなら、2社の製品よりも目立って優れていなければ買う理由は全く無いのです。そのため慣れないにも関わらず、世界でもトップクラスの燃費を誇る機体を作ることになり無理が出たんじゃ無いかなと考えます。

 

とはいうものの、エンジニアのインタビューの話があまりネットに出回らないせいか部外者の私たちでは全く全容が見えてきません。これがまたMRJへの不信感へと繋がっている部分はあると思います。これは開発が終わってないために仕方ないことではありますが、伝わる話は全て延期の噂とキャンセルの話、如何に失敗しているかの話に溢れており、全く希望が持てないのも事実です。一航空ファンとしてはなんとかはっきりとした展望が見えて欲しくあります。

 

ちなみに一説には、B737MAXの墜落事故が相次いだせいでFAAの航空機の型式証明の審査が厳しくなったために安全面の部分の許可がおりないのでは無いか?なんてことも言われています。

 

最後に、三菱航空機自体は6回目の延期報道は全て否定しているので6回目の延期の部分でとやかく言うのは実はまだ不適であったりします。下の市場は応援の意を込めていつもより多めに置いておきます。

 

負けてたまるか! 国産旅客機を俺達が造ってやる -小説・MRJ開発物語-

負けてたまるか! 国産旅客機を俺達が造ってやる -小説・MRJ開発物語-

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翔べ、MRJ-世界の航空機市場に挑む「日の丸ジェット」- (B&Tブックス)
 

 

 

一橋ビジネスレビュー 2018年SPR.65巻4号: 次世代産業としての航空機産業

一橋ビジネスレビュー 2018年SPR.65巻4号: 次世代産業としての航空機産業

 

 

 

国防総省・FFGと潜水艦の購入速度の低下へ

イランによる軍事攻撃や旅客機撃墜など米国とイランの関係が悪化し、一時期本格的な軍事衝突が懸念されましたが、現在は小康を保てています。イランは中東での大国の一つであり、彼の国の影響力低下は中東情勢のさらなる混乱を生む可能性があるので何とか外交で解決してくれたらなとは思います。

 

さて、今回はそんなイランと対立している米海軍のお話。普段は強いイメージの米軍、それも最近の戦争では空爆の多くを海軍が担当するなど影響力の強そうなところですが予算はどこも大敵だったようです。

www.defensenews.com

去年の記事とやや古いものなのですが、国防総省は今後5年間の予算において新型フリゲート艦(FFG(X))の建造ペースを落とすようです。予定では2020年から毎年二隻ずつ建造し、2030年まで継続するつもりだったらしい。それが最初の2年は一隻ずつ。その後2024年で三隻の建造になるとのこと。2023年と2024年に二隻建造としながら2024年に3隻建造とするらしいので、23年からは毎年一隻増やすといった感じでしょうか。他にはバージニア級潜水艦の建造数の減少がなされるようです。

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wikipediaより ヴァージニア級カリフォルニア

何でそんなことをするかというと、どちらも急を要しないためであるとしています。又、2030年までにオハイオ級戦略原潜の後継となるコロンビア級を導入を考えており、この潜水艦はアメリカの核戦略に大きく関わることになるのでこちらの開発の方に注力したいようです。

一方で海軍はLCSの初期艦の4隻を早期に退役させたい意向を示しており、今後この流れは加速するでしょうから、FFG(X)の導入のこれ以上の進捗低下は沿岸警備や低強度任務に支障をきたすと思われます。

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wikipediaより インディペンデンス級

日本語のソースがまだないので知らなかったですが、ついにLCSの退役の話がきてしまいましたね。アメリカはフリゲートに当たる艦は現在なく、気軽に台湾などの中小国に軍艦を売ることができない状態なのでLCSの早期退役の希望はそこと単に中途半端で使い勝手がよくないから捨てたいのかなと思えます。FFGがある程度のサイズがあるので使いやすそうですが、それもペースが怪しい。海自もFFMが導入待ちでかつ、地方の護衛艦隊運用を二転三転しているので巨大な海軍を持つ国の固有の病なのかもしれません。にしても、購入ペースの変更でそんなに変わるのか?そこらへん分からないのですが、いずれにせよ米国は中小国に対して独自の建造能力を持たせるか、ドイツなどの国により委託する流れに今後もなりそうです。

 

アメリカ海軍2020 2020年 01 月号 [雑誌]: 世界の艦船 増刊

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航空宇宙自衛隊創設ですが…

ここ最近忙しさがとんでもなくレベルアップするのでただでさえゆっくり更新なのがさらにゆっくりになると思いますが、よろしくお願いします。

 

さて、本日は自衛隊設立以来の大きなイベントが発生するかもしれません。自衛隊は現在陸・海・空の三つ存在します。ですが、現在GPSやその他衛星通信網の防衛の重要性はスマートフォンやカーナビ、船舶や航空機の航法システムのみならず、天気予報、二酸化炭素濃度計測や地形情報など日常生活や科学技術方面で利用が拡大し続けている宇宙空間での危機は日々高まっています。例えば、GPSの撹乱工作に宇宙デブリ、キラー衛星などがあります。そこで今回自衛隊航空自衛隊航空宇宙自衛隊に改組することになりました。

trafficnews.jp

個人的にその任務の重要性と大きさは分かるのですが…

いかんせん名前がダサい。

いや、わかりますよ?イスラエルやロシアは航空宇宙軍を名乗ってますし、米軍も宇宙軍を創設しています。しかし、自衛隊の語数と航空宇宙という語は幾ら何でも多すぎるのでダサく聞こえてしまいます。

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wikipediaより イスラエル航空宇宙軍のマーク

 まあ、そもそも自衛隊という名前も韓国だと自●の意味になったりと色々アレなのですが…

ただし、自衛隊そのものは航空宇宙自衛隊になることでより一層宇宙という従来関与していない分野を守ることになり、他にもサイバーに電子攻撃などの分野も自衛隊は担当することになります。

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防衛装備庁より 電子戦研究をしている

今回の新しい領域は今までの分野よりも重なっている部分が多いです。例えば宇宙空間が被害を受けると結果的にネットやGPSなどの通信に大きな影響が出ますし、電子攻撃をしてもその分野はやられます。実際ウクライナ危機ではウクライナ軍や近隣に展開する米軍部隊に対してロシア軍の電子攻撃が実施され、米軍の機器は使用できなかったと言います。またサイバー分野はまさにネット空間であり、ここへの攻撃は人工衛星への攻撃や実質的な電子攻撃を実施することが可能です。

この三つの分野はどれか一つを攻撃すればネット空間を破壊できるという共通点を持ち、市民生活へ大きな損害を与えられます。これらへの攻撃は正規軍のみならず、テロリストやクラッカー(ハッカー)などの危機に晒されます。これらの分野に今後自衛隊は深く関与し、警察やJAXA・民間企業とも連携して防衛を強化していくことでしょう。

新型弾道ミサイル防衛システム開発へ

新年三が日を越えいつもの日常に戻っていくことに安堵と寂しさを感じますが、安堵の感情は子供のころでは感じなかったことにまた一つ大人になった寂しさがと色々考えさせられます。

 

さて、今回は陸上自衛隊が新型の弾道ミサイル迎撃ミサイルを開発することになったいう話です。

www.sankei.com

現在のところ自衛隊保有している弾道ミサイル迎撃ミサイルは海上自衛隊のイージス護衛艦から発射されるSM-3と航空自衛隊ペトリオットPAC-3ミサイルとなります。記事では国産ミサイルの開発はロシアのイスカンダルミサイル(SRBM)の対応が厳しいのが国防上の問題になっているためそれを補うためとされています。

 

我が国のミサイル防衛は強化が決定している

実のところ自衛隊のミサイルは航空自衛隊PAC3は射程距離(20→35km)と機動性をアップをしたMSE型への改良が決定、予算も前倒しに確保されてます。海上自衛隊向けのSM-3は去年に米国から3500億円相当(ソース見つけられなかったですが180発とか)を購入し、そのミサイルは最新型のBlock ⅡAとなっています。

www.afpbb.com

maps.gsi.go.jp

また、上の地図サイトから調べてみるとわかるのですが産経新聞で不安視されていたイスカンダルミサイルは射程400kmとなっており、北朝鮮と韓国の国境であれば600km以上のミサイルでないと西日本を射程に収められず、元山付近であれば700km以上でないと西日本を射程に収められないのです。実際のイスカンダルミサイルはリミッターを解除して射程延長できるようですが、遠くに当てるには弾道ミサイルなら高度をあげるしか方法がなく高度が上がればSM3でも迎撃が可能になるかもしれないです。

一方PAC3の射程の短さが問題になりますが狙われやすい大都市圏を防護するだけの能力は最低限有しているので、過疎地への被害に目を瞑ることになってしまいますが人口密集地への被害を抑えることはできます。もっと言うと陸自は建設地の決定もままならない状態ですがイージスアショアも導入され、米国で開発中のSM3Hawkを導入すると地上側でも迎撃が不可能と言う訳でもないということです。

 

それじゃ陸自の新型ミサイルは無駄か?

結論から言うと無駄ではありません。と言うのも、SM3 Hawkはできていないものでこれの存在をできている前提で語るのはただのオタクの妄想に終わる現実性のないものになります。また射程延長により高度が上がるのも希望的観測に過ぎず、北朝鮮イスカンダルミサイルの飛行高度は60kmと見積もられているらしく、SM3の最低迎撃高度が70kmとなっているので頑張っても迎撃できません。

PAC3は能力は上がりましたが、これを外すと致命的な被害を受ける上にPAC3自体命中率が必ずしも高くないのではないかという意見もあります。アメリカにはPAC3とSM3の間を埋めるTHAADミサイルが存在しますのでこれを所持していない日本はこの手のミサイルを入手することのメリットが大きいのです。

ちなみにアメリカはSM3より早い段階・迎撃できない高度を迎撃するGBIミサイルが存在します。これは弾道ミサイルまんまなので日本が導入することは現実的でなくミッドコース(中間段階)、ターミナルフェイズ(終末段階)の防衛能力を上げるしかないのです。その改善に今回の陸自のミサイル開発は大きな意義があります。

また、記事の後半で述べられている新型滑空弾頭が本命になります。これは現在ロシアと中国が米国を出し抜いて開発している兵器でこれは従来のBMDでは対応できず、攻撃能力よりもBMD能力を上げてきた米国の戦略を打ち砕く軍事パラダイムの変更を起こしかねないものとなっているので、これを迎撃するミサイルの存在は急務になる訳です。

 

因みに

今回の自衛隊の対弾道ミサイル開発はカバー範囲の強化以外にも意味があります。それは国産ミサイルの開発で自由な改良ができますし、米国以外の国に売り込みが可能になる訳です。幸運か不幸かはわかりませんが弾道ミサイルは世界に意外と拡散されており、身近な国では台湾と韓国が独自の弾道ミサイル保有しています。それどころか、日本の周りの国は全て軍事大国で弾道ミサイル保有しています。イスラエルもびっくり。

輸出の需要があるのはイランの攻撃に怯える国やフィンランドなどのロシアに近接する国々なんかもあります。潜水艦や哨戒機よりも脅威は身近なため需要も発掘しやすいので売り込みのチャンスになり得ます。改良に関してはSM3の改良にしてもPAC3にも言えますが米国の要求と我が国の要求をすり合わせる必要があるので時間がかかりますし、米国議会で許可がなければ購入しても輸入できないと言う問題がありますので、そこのハードルの解消ができるのは大変意義のあるものになります。

 

なお、よくある敵基地攻撃能力があればミサイル防衛は要らないと言う意見ですが、どこの国も日本の周辺は軍事大国であるが故に防空網が形成されており、巡航ミサイルや戦闘機は多くが迎撃される可能性があります。そもそも、この戦法は湾岸戦争と言う30年前の戦争からある戦法なので米国に敵対する国である日本の近隣諸国は対策をしてるのは明白であり、思うような効果はないと思います。さらに、攻撃には目標の確認が必要ですが国交もなく強固な反スパイ網とゲリラ戦・特殊戦の経験のある北朝鮮工作員を送るのはリスクが大き過ぎ、偵察機グローバルホークでは撃墜の可能性、衛星は常時監視衛星が存在しないため監視不能と日本の現状では敵基地攻撃能力は生かせず予算も安いもので済まないものになると思われます。

いずれにせよ、北朝鮮と中国の弾道ミサイル能力が上昇している中で防衛システムの選択肢が増えることは非常に歓迎すべきことだと私は思います。