よろず夜話

軍事や自衛隊を多めにしつつ色々な話をするブログ。話の正確性は6割ほど、力を抜いた話ができるようにしたいです。アイコンは陸上自衛隊HPより引用

無人兵器は自衛隊を救わない③

過去二回に渡って行なってきた無人兵器は自衛隊を救うのかですが、今回でひとまず最後にしようと思います。そのためちょっと普段より長くなるかもしれません。稚拙な話になりますがよろしくお願いします。

 

 

strider1.hatenablog.com

 

 

strider1.hatenablog.com

他国の進化がすごい

 さて、本題となりますが自衛隊にとって無人兵器は救世主になり得ないとする理由の4つ目ですが、それは隣国の存在です。

 

中国

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、中国は現在多数の無人兵器を開発を実施していますし、輸出や実戦配備も行なっています。中国は人海戦術のイメージがある人もいるかもしれないですが、現在は無人兵器大国になります。また技術力も高くUSVの複雑な隊列航行の実験を公開するほどになります。

 

www.independent.co.uk


China conducts large scale test of unmanned vessels, more drone boat than the USA

このスウォーム行動と呼ばれるものですが中国はこの点においては米国と同等以上の存在となっているほどに技術力を誇っています。中国は他にも今年の国慶節で発表された新型無人航空機を複数発表しており米国やイスラエル、欧州と同等以上の存在感を示してます。伸び続ける軍事予算を考慮するに今後も無人兵器開発において米国と同等以上の能力を持つ国になることも容易に想像がつきます。

GJ-11やWZ-8のようにアメリカのX-45/47BやD-21を想起させるものになっており米国と似たドクトリンの模倣、もしくは独自の体系を作成しようとしていると思われます。なお、WZ-8は南沙諸島西沙諸島での活動を行うと推定されており、また爆撃機のH-6から射出されると考えられます。ひょっとすると弾道弾を発射できるH-6Nを流用できるのかもそれません。なお、中国軍はパレードに参加する兵器は全て実戦配備しているとしています。

以上のように中国の兵器開発能力と伸び続ける軍事予算の観点から既存の兵器に限らず、無人兵器においても軍拡競争で正面から戦うのは懸命でないほどの勢力担っています。


China exhibits advanced drones, unmanned underwater vehicles in military parade

 ロシア

続いてはロシア、こちらも無人兵器においてはかなり先進的な部類に入ります。ロシアは他国より先進的な分野はUGVだと思います。ロシアは無人戦車と言っても差し支えないUran-9をシリアにおいて実戦配備をしたとされています。その能力は日中に限定されますが、4マイル先の目標を探知することが可能で対戦車ミサイル、30mm機関砲等の多数の装備を取り付けています。


Боевое применение многофункциональных комплексов разведки «Уран-9»

また映像を見て頂けるとわかるのですがオンロードでおよそ35km/h、オフロードでおよそ10km/hと現行の戦車と比べて遅いですが人間よりも高速で活動できます。

他にもロシアはUCAVの開発を積極的に行なっており、Su-27シリーズで有名なスホーイのS-70、オホートニクというステルス無人機を今年の8月3日に初飛行させています。重さは20tと現用の戦闘機と同等の重量となっており本格的な正規戦の任務にも就くことが可能な能力を持つことができるとされます。


Первый полет новейшего беспилотного летательного аппарата «Охотник»

 

実戦においてはSu-57と共に敵防空網の撃破に活躍するとされています。その他ロシアはイスラエルのヘロンに似たオリオンを導入したりと軍の近代化に積極的になっております。

要は何が言いたいのか?

なんだかただの兵器紹介になってしまいましたが、つまり何が言いたいかと言うと日本は隣国と比べて非常に遅れていると言う事です。最近はイスラエルと共同開発に乗り出すらしいですが、この10年ちょっとほどの間の技術格差を詰めることは簡単とは言えないです。さらに自衛隊の現状の調達数もこれからの予定を見ても多いとは言えず、質・量共に隣国に遅れる形になっています。確かにこれからテコ入れすることで変わるかもしれないですが、現実的に見てそれは先のことになるんじゃないかと思います。

自衛隊は近隣諸国と比べ現状に加え、これからの装備調達においても優位性を持てていないことが自衛隊にとって無人兵器が将来の救世主になってくれはしないと言う訳の一つです。これから進めても救世主になる程十分になってくれる訳ではないと言うことです。

 

国際的規制の存在

さて散々に色々言ってきましたが、これが最後の理由と言うことになります。(細かいことはもう少しありますが重箱を突きすぎてもつまらないですし)

最後の理由は単純でこの現時点において既に規制をしようと言う国際的な議論が起き始めていると言うことです。

www.nikkei.com

上の記事は今年に実施されたもので、実際には規制に直接つながる文書は採択されませんでしたが、ここで注目すべきところは日本政府の主張です。

日本はAI兵器には人間の制御が欠かせないと主張し、国際的なルールの必要性を求める。事前に提出した文書には「日本は完全自律型兵器は開発しない」と明記した。

ここです。無人兵器のこれからの強みを完全に潰しかねない部分になります。これがいつまでも継続するとは思いません。しかしながら、このように国家の指針を示していることは意義として非常に大きいものです。

この部分を除いても今後も無人兵器の規制は続くでしょうし、いつかはなんらかの規制が来たとしても 何らおかしいことはないのです。これが分かりやすく、なおかつ大きな自衛隊にとって無人兵器は救世主になれない理由となります。

 

さて以上が私が無人兵器は自衛隊の救世主になれない理由ですが、いくつかはシンギュラリティの到来で解決されるでしょうし、やや苦しいものもあったと思います。

元々この話をしたかったのは何でもかんでも無人兵器さえ導入すれば良いと言う雑な議論をする人が多かった事に起因します。私としては無人兵器は自衛隊のこれからに不可欠と思ってますし、日本は本格的に開発に乗り出して欲しいと願っております。そして、無人兵器への議論がより活発になって欲しいです。

最後に今のところ兵器の具体的なスペックを載せてないのですが増やした方がよろしいですかね?読んでみると非常にあっさりしている事に気づいたので…