よろず夜話

軍事や自衛隊を多めにしつつ色々な話をするブログ。話の正確性は6割ほど、力を抜いた話ができるようにしたいです。アイコンは陸上自衛隊HPより引用

海自の中東派遣の意味

はてなブックマークってコメント機能がついてるんですね。ずっとブックマークするだけだと思っていたのでいくらかコメントに目を通せていないです、ごめんなさい。

 

さてコロナウイルスの拡大で影が薄くなり、自分自体そんなに目新しいことをする訳でもなかったので大して興味がなかったので超今更ですが、海上自衛隊護衛艦の中東派遣について話そうかなと思います。

www3.nhk.or.jp

今回作ろうと思ったきっかけとなった記事なのですが、NHKらしく他のマスメディアよりも賛成・反対が載っていたと言う感じでかなり好感を持てるものでした。今回はその記事の内容に即していこうと思います。

 

今回の自衛隊の任務とは?

中東派遣における自衛隊の任務は情報収集とされています。自衛隊の情報取集任務は法律的には防衛省設置法4条1項18号によるものとされます。気をつけなければならないのは今回の任務は防衛省設置法であり、自衛隊法に基づくものではないということです。ちなみに任務の場所は実際に戦闘になる可能性が高いホルムズ海峡にペルシア湾ではなく、オマーン湾アラビア海北部などの比較的イランから遠い地域になります。

>防衛省・自衛隊:中東地域における日本関係船舶の安全確保に関する政府の取組について

 

www.google.co.jp

 

派遣される装備

今回の中東派遣には護衛艦一隻、哨戒機2機といった構成になっています。この内容は各新聞社が報じています。

www.asahi.com

今回派遣された哨戒機の説明をすると使われているのはP-3Cで現在配備が進んでいるP-1ではありません。これは確かな情報元が見つけられていないのでなんともですが、P-1の機体の大きさが全面的にP-3Cよりも一回り大きいことから拠点としているジブチのハンガーに入らないためではないかと言われています。

またP-1はP-3Cよりも機材等は一新されていますが、相手はその機材を使う潜水艦や大型の艦艇ではないことため無理にP-1を持っていく必要はないと判断されたのかもしれません。

とは言え、P-3C自体は20ヶ国で採用された哨戒機にしては多く製造された名機といって差し支えない機体であり、タンカーを攻撃している組織が通常のテロリストよりも重武装である可能性も考えて信頼性のより高い機体を使うことは理にかなっていると考えていいと思います。

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wikipediaより P-3C

 

護衛艦に関しましては、派遣第一弾としてはたかなみ型護衛艦の「たかなみ」が使用されます。たかなみは2003年に自衛隊に配備された護衛艦で年数だけで言えばそこそこに年数が経っているもののむらさめ型護衛艦の改良型として建造され。護衛艦隊の主力となる艦船の一つとなっています。今回の派遣では艦橋に防弾ガラスを取り付け、船体には非殺傷兵器となるLRAD(音響兵器)を使用します。LRAD自体はイラク戦争後の駐留米軍に採用されたことをきっかけに世界中の軍隊や警察組織にて運用されています。当然ながら自衛隊でも採用されていて、ソマリア派遣部隊や邦人救助部隊となる中央即応連隊が使用している実績のある装備となっています。

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wikipediaより たかなみ型護衛艦「たかなみ」

 

中東派遣の不安と個人的な所感

つらつら事実のみ書いていても仕方ないので、少し個人的な意見を書きたいと思います。その前に、自衛隊の今回の派遣に対する不安と批判を書こうと思います。

今回の派遣ではイランとの関係悪化の話が出ています。また、米国と協同した行動は中東からの反感を買う可能性があるのではないか?ということです。

また、批判としては何かの正式的な任務ではなく防衛省設置法による情報収集を活動根拠とするのは法律と国会を軽視しているといった指摘です。

 

まずは不安の方から、イランとの関係悪化の可能性ですが今回の派遣のきっかけとなった国華産業含めた多国籍の企業のタンカーへの爆破テロであり、この攻撃は米国含めた有志連合はイランによるものとしてますが、イランは一貫して米国への非難をするもののテロへの関与は否定しています。

つまり、イランへの直接的な敵対行動になるわけでもなく、期間内でイランが何もしないのであればイランはある意味で潔白を得ることができるのでイランとしては友好国による情報収集は困るものではありません。また、上記でアラビア海のマップを掲載していますがイランからは正直かなり遠いです。なんかあっても急行するには時間かかる上に、自衛艦は対地攻撃能力が巡航ミサイルがないこともあり弱いので特に脅威と認識されにくいと思われます。

他国からの認識はイランのことが好きな国よりも宗教上の理由で敵対している国のが多いので、イランの監視任務は他の中東各国にはありがたいものであります。また、国民感情の面ですがイラク派遣が理由に中東での対日感情が悪化したという話はあまり聞きません。仮に起きるとすればイランの国民感情が悪化する可能性ですが、これもあったとしても世論に影響を与える可能性は低いのではないかと考えます。

というのも、彼の国は情報統制がかなり厳しいものがあります。日本に対する感情の悪化によるデモを扇動しても、日本自体はイラン問題のプレイヤーではないので反日感情を煽る意味がありません。

扇動したところで仲裁役、中立的な存在を失うだけでイラン側にメリットがないわけです。ということは、日本のことを必要以上に煽る流れを政府が作る可能性は少なく、米国みたいに巨大な怒りがぶつけられないと思います。また、今回の中東派遣はインドや韓国も日本と同様に独自派遣を表明しており、怒りの矛先はあってもかなり分裂すると考えられます。

 

注:ちょっと政治くさい内容になります

次に批判となりますが、できることであれば法律的な強い根拠があった方が良いというのは事実だと思います。問題は法律にして出来上がるまでの時間とできてからの法案審議の時間です。法律作成は残念ながら本来数年かけて行うものであり、また法的安定性の問題からも去年の臨時国会の間に成立させられる法案を提出することは安全ではありません。まともな条文になることなく提出され、提出される前に内閣法制局に差し戻されたらそれでおしまいになるやもしれなく、仮に提出しても野党から対決法案として見られた場合には早期の成立は困難になりうるものと予想されます。

 

ただし、2001年のテロ特措法はわずか一ヶ月未満で法案可決しています。それなので特措法にすることで早期の法案提出が可能であったということは付け加えておきます。

一方で活動場所は基本的に公海上になり、テロ特措法のように他国軍と直接的な協同はしないので法律を通さなかったこともある程度の論理性はあります。なのでここら辺は政権の行政運用の好みの問題かと思います。できることなら今年の通常国会臨時国会で延長される際には追加の根拠法が提出あればいいんですけどね。法律にするにしても運用予定が半年なので作るメリットが薄いんだろうなといった感じでしょうか。

 

国内や外交は色々ありますが、実際の現場は終始安全で終わり自衛官が無事帰国できることを願うばかりです。