病院船導入を検討…?
最近長めの記事を書くことが増えましたが、少しだけ短い方がいいんですかね?要点だけを絞って話すと言葉足らずになりそうですが、はてさて…?
さて、今回は自衛隊というよりは大臣たちからの検討事項となり始めている病院船についての話題です。
日本での病院船は旧日本軍では海軍とともに陸軍で多く運用されていました。
その多くは商船改造であり多くは撃沈するなど激しい任務でありました。
自衛隊が持たない理由
現在の自衛隊では一切専任の病院船を所持していません。というのも、病院船は普段ではあまり実用的とは言えません。大型の船舶に任務の都合上大きくなりやすいにも関わらず、国際法により最低限の小火器を除き非武装、軍事的活動への投入を禁止、他国への船舶情報の通知などが必要になるので逼迫している自衛隊が通常の哨戒任務に使えない船舶を持つのは非常にコストパフォーマンスが悪いと言えます。
これは1949年に締結されたジュネーブ第二条約の22条、26条、34条、43条に記載されています。
その代わりになりますが、補給艦や輸送艦、大型のひゅうが型やいずも型護衛艦は病院船的な能力を保有しています。しかし、能力としては病院船ではないのであくまでついでに留まります。そのため現在他の自衛隊が持つ手術コンテナを積載し、病院船能力を上げることを想定していました。
他国の状況
病院船は現在のところ、アメリカを含む比較的軍事力に余裕のある国や災害などが多い国での運用が目立ちます。
現在の保有国はアメリカ、ロシア、中国、フランス、インドのような軍事大国に加えてブラジル、ペルー、インドネシア、ベトナムが軍用船舶として保有しています。
マーシー級は1000もの病床、12の手術室、CTスキャナーなどを持つ病院船で世界最大の病院船となります。そのトン数は約7万tにもなり、これは自衛隊のどの艦船よりも巨大な艦船になります。
他国では中国の920型(安衛型)病院船です。通称は平和の箱舟。同国が保有する初の専任病院船です。過去にも中国は病院船を保有していましたが、改装船でした。920型は専任であるために能力が格段に向上し、病床数も500~600ほどになり、トン数では23,000tになります。規模ではアメリカに劣るものの船齢が若いこともあり、機器更新は早いのではないかと思われます。
調べて思いましたが、ペルーやインドネシアなどの国のような海軍国としてはややマイナー(ペルーは2017年まで戦前の巡洋艦を所有してたことで有名)な国が保有してたことと、ものはあるけど能力は低下し続けているブラジルが保有していたことに意外性を感じたことでしょうか。ブラジルはクレマンソー級の次どうするのか気になるとこです。
基本的に大きな軍事力を地域的に持つ国が中心といった感じでしょうか。この括りなら、インドネシアやブラジルの保有も納得できるものです。ペルーは現在は規模は小さいものの、1999年まで徴兵をしていたことから戦時に対応させるためだった可能性はあります。一方で、軍事力があっても保持していないイギリスやドイツなんかもありますので必須という訳ではないようです。
個人的な所感
私としてはあってもいいかな〜くらいなものであまり積極的に持って欲しいと願うものとは捉えていません。
というのも、基本的に自衛隊は医官が不足してますし海自の艦船の充足率も低いことから大量の人員を必要とする病院船は足枷にしかならないのではないかという疑念があります。
また、現在の自衛隊はPFIによって民間フェリーの「はくおう」と「ナッチャンWorld」を有事に利用できますし、はくおうについては新型コロナウイルスによって利用されていることは報道により明らかになっています。能力としてはおそらく足りないかもしれないですが、高い維持費と任務利用範囲の狭さを考えると安易に利用できるものではありません。
海保に持たせては?という意見もあるかもしれないですが、海保は海自よりも貧乏ですし、ジュネーブ第二条約では病院船は軍艦以外では救済組織、またはそれに準ずる組織、加えて私人としており公船でも軍艦ではない海保の船舶では有事の際に病院船として機能するかは戦争当事国のさじ加減になる可能性があり危険な賭けだと言えます。
しかし我が国は毎年なんらかの災害に被災しており、人口減少と過疎による地方の体力低下、自衛隊への国民からの期待もあって年々その需要は高まっていると考えて良いと思います。
病院船は直接の国防に寄与しない船舶、いわば贅沢品のような存在である故に導入に際して我々国民はその必要性を話し合う必要があるのではないかと思います。