よろず夜話

軍事や自衛隊を多めにしつつ色々な話をするブログ。話の正確性は6割ほど、力を抜いた話ができるようにしたいです。アイコンは陸上自衛隊HPより引用

自衛隊の新小銃・拳銃決定とその理由

わりと自分の好きなように書いているこのブログですが、元Jのかたに見ていただくことがあったりすると書いた内容の適当さに焦る最近です。

 

 

さてさて、今回はミリタリー関係に興味がある方なら半分以上の方が注目してたんじゃないかと思われる新小銃と新けん銃が決定されました。

www.mod.go.jp

防衛省・自衛隊:新小銃・新拳銃の決定について

今回は主に小銃に注目していきましょうか。

今回のトライヤルには日本メーカーからは1社、ベルギーからは1社、ドイツから1社参加していました。防衛省のプレスではこうなってます。

参考1)新小銃のため参考品として取得した3品種

  • ①HOWA5.56(豊和工業製)、②HK416(ドイツ・HECKLER&KOCH製)、
  • ③SCAR-L(ベルギー・FN HERSTAL製)

 (※)平成30年度予算により3品種の参考品を取得。

ミリタリーに詳しくない方だとここにアメリカ製がないことに疑問を感じる方もいるのではないでしょうか?実際のところアメリカの銃メーカーは昔こそ元気でしたが今は老舗が軒並み倒産するなど、若干の斜陽産業化している節があります。あくまでこれは軍事向けの話何ですけどね。

あとベルギーってチョコのイメージとアクセサリー好きな人ならダイヤのイメージがあるとは思いますが、世界有数の銃器メーカーであるFNハースタル社が所在しています。ここのメーカーの製品は西側諸国であればほぼ全ての国が納入しているとも過言じゃないくらいの実績があります。映画やゲームでよく出るガバメントや、M2、P90なんかがFN社の製品となります。

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wikipediaより

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wikipediaより SCAR-L

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特許情報プラットフォームより

さて、本題に戻ると今回のトライアルは海外勢が強いものだったと思われます。画像上二つは共に米軍で特殊部隊を中心に採用されてますし、特にHK416はノルウェイやフランスなどの各国で制式採用されるほどの実績があります。またSCARーLの方は世界各国の特殊部隊で運用されています。ちなみにポルトガルとフィリピンは制式化するほど気に入っているようです。ちなみにですが、HK416は海自の特殊部隊のSBUと陸自の特殊作戦群が採用しています。

 

これだけ見たら確かに豊和の小銃に勝ち目はないです。考えてみてください、特殊部隊御用達です。非常にものとしては良いのです。そしてそこが今回の敗因です。

nationalinterest.org

ここにM27(HK416のLMG型)の納入費用が書かれてますが1億5000万ドルで5万丁購入とあります。一丁あたり3000ドルとなります。民間市場でのHK416の価格も大差なかったので同じく3300~4000ドルでSCARは民間で取引され、軍用でも大きな差はないと思われます。ここで問題ですが89式小銃の価格は高くて34万円、安くて28万円となってるらしいです。(wiki参照)

輸入品のメリットとは何でしょうか?性能もさることながらなんだかんだで安いという点です。89式が高い高い言われてましたが、それより下手したら高いのです。しかも普通に考えてただ輸入したところで整備と修理をするのに地球のほぼ反対の欧州まで銃を運ぶわけにもいかないのでライセンス生産になるわけですが、正直これをやるともれなく価格が上がります。戦闘機の話になりますが同じF-15でも米軍が40億くらいで作ってたのに対して日本は倍の80〜100億です。高いでしょ?冗談抜きで一丁100万円の小銃が出来上がる可能性がつきまとうのです。ちなみに同じ銃で比較すると米軍のMINIMIは一丁4000ドルで日本の住友重工のは200万円します。まさかの5倍にもなります。

もちろん利点もあるわけですが、機関銃ならともかくたくさんの兵士がもつ小銃でこれしたら税金の無駄になりかねないわけです。そして性能もHK416で言えば元のM4カービンにはなかった欠陥があるのではないかと指摘する人もいます。つまり壊れやすいということ、わざわざ高いのを買ってそれでは困るということです。

SCARは一方でそこまでひどい話は聞きませんが5.56mm弾仕様は以前に米軍のSOCOM(アメリカ特殊作戦軍)が導入を白紙にした一幕があります。どちらも優秀ではあるものの手放しで喜べるものではないと言ったところです。

 

ちなみに筆者としては自衛隊はSCARはともかくHK416は採用はないと別の理由で確信してました。理由は簡単なとこで特殊部隊が使ってるからです。wikiyoutubeでいくつかの国の特殊部隊の装備をみていただけると分かるのですが、一般部隊とは違う銃を使います。もちろん、イギリスのような特殊例を除けば特殊部隊も制式採用のものも使いますが一般向けと特殊向けが同一のもので統一されることは結構少ないです。もっともフランス軍は違っちゃいましたが、なんだかんだで細かい仕様は違ったはずです。前述の通りに自衛隊の特殊部隊はHK416を使用してるので限りなく低いと判断したわけです。もっとも過去の例から国産になるとは思いましたが…

 

最近の防衛産業関係では出来レースや腐敗を指摘されることがあります。今回も外国製であったことに対して不満が出ています。その一例としてはレイルシステムを未だに4面で採用されている点です。M-LOKやKey-Modのような部分、部分のみにレイルをつけられる仕組みがトレンドになっている訳です。

確かに特殊部隊や一部部隊向けでは利用が始まっているのですが制式に利用しているケースは少なく、これはSCARやHK416も初期状態では付属していません。もっとも、自衛隊のそれよりはレイルがコンパクトだったりと豊和の最新の意匠は長すぎるようにもみえます。また、過去の意匠を見るとM-LOKに近いシステムをつけているデザインも存在し、現在見れる一番新しい意匠を見るとレイルの前後にねじが存在するのでレイルシステムは取り外しができる可能性もあります。ここら辺は実物を見ない限りは未知数だと思われます。どのみち海外製を採用したところで官品にM-LOKが来るかは怪しいです。

また、値段に関しては令和2年度予算では3283丁を10億円で調達し、一丁あたりおよそ30万円程と他の候補より高いと言ったこともないです。

あとは新型の6,8mm弾薬を米軍がトライヤルしているので間が悪いと言った意見です。これは過去でもあった出来事で64式小銃採用の年にM14は生産が中止され、1967年にM16が制式化されました。

これだけ見れば日本だけ遅れているように見えますが、64式小銃の生産開始と同時期にドイツはG3小銃の生産をはじめドイツは後継のG36の採用を96年までしてない訳です。またブルパップで有名なステアーライフルなどもM16の制式化の10年後になってから登場してます。というのも、M16に使われている5.56mm弾がNATO規格になるまで数年の時間差が存在していたためです。

結果的に米軍と同じ規格にはなりましたが規格化されるのか、それとも時代の徒花に消えるか分からない部分があり一概にすぐ新型弾薬対応銃にしないとならない理由もない訳です。実のところ、今回のトライヤルに参加していた銃は全て拡張性を一定以上考慮されたもので新型の弾薬に対応する準備は自衛隊はしていると見てもおかしくないと思われます。いづれにせよ、フランス、ドイツといったNATOに帰属する国々もほぼ同時期に新型小銃を導入しているので日本が間が悪い、時代遅れという訳ではない訳です

 

今回の自動小銃の決定での不満は一定数持っている方はいられるかもしれないですが、できることであれば冷静な議論を行い、ただの誹謗中傷合戦にならないことを祈りたいところで今回の話を終わらせたいと思います。