よろず夜話

軍事や自衛隊を多めにしつつ色々な話をするブログ。話の正確性は6割ほど、力を抜いた話ができるようにしたいです。アイコンは陸上自衛隊HPより引用

DSEI JAPANの意味

10以上の記事を投稿してきましたが、ずっと軍事の話ばかりしてて全然よろずじゃないなと思ったので次あたり別の話題でも取り上げようと思います。ミリタリー夜話じゃないですからね…

 

さて今回は先日の11月17日に千葉の幕張メッセで日本初の軍需品の見本市であるDSEI JAPANを行いました。DSEI自体はもともと英国で行われていた見本市であり、独自の見本市を持たない日本にとって大変意義のあるものであったと思われます。

で、ここから本題ですがなんで今の日本に?と言う話です。ここに疑問を持たれた方は一定数いると思います。後述しますが金儲けのため?とか噂されますが理由はどちらかと言うと難しい現実故の策かもしれません…そんな訳で私と考えていきましょう!

連携のため

実はこのために実施されたのがかなり大きいと思います。と言うのも、DSEI Japanのホームページではこんなことが書いてました。

本展示会は海外の防衛・セキュリティセクターと日本の防衛コミュニティ全体の架け橋の場として、また、この業界全体のビジネスマッチングの場として、グローバルに展開する業界全体の情報共有、協力そしてその先にあるイノベーションをサポートします。(出典:DSEI Japan HP)

 ホーム画面最初に書かれている文章の一節でこのように書かれていることにかなりの意味を持っていると思います。もちろん、単純な商談としての意味合いも大きいとは思いますが、過去の防衛装備移転三原則での実績を見るとTC-90なんかの製品の移転もありましたがおおよそ共同研究ばかりなんですよね。

そこらへん考えると製品を世界へ売ると言うのは前例からみて主目標にしてる雰囲気と意気込みは弱いのかなと。海外製品を日本に売るにしても防衛予算の輸入品調達の大きなウエイトを占めるのはアメリカ製の飛行機やFMSとなっておりこの分野で競争に勝つのは価格面や技術面で難しいと言えます。

そのためDSEIが主張する中にある防衛予算の増加に伴う市場拡大はあくまで限定的な範囲での装備調達に影響を与えるのに留まるんじゃないかと考えてます。また、参加企業一覧を見ると日本企業の数はやや少なく、海外企業の数がやや多いといった感じでやはりそれをみても海外に売り込みのためと言うのは主目的とは言いにくいのかなと思います。

 

その一方で日本企業でも強みを持っている三菱や川崎は出展し実際の製品のいくつかも展示するなどしてますし、防衛装備庁も出展してることから技術提携の目的は一定以上存在するとみていいのかなと思います。また参加する海外企業もイスラエルのラファエル社、レイセオン、レオナルドといった既に実績を重ねたところが多いです。お互い技術力がある中で売り込むのは簡単ではないのでやはり技術的な提携や情報共有を目的にしているとみています。なかでもエアバス防衛省のシンポジウムでもブースの参加してましたのも理由としての一つになります。なんか屁理屈っぽいですね

ノウハウ確保のため

これは何のためかと言いますと、日本の見本市のノウハウということです。過去にテロ対策や災害向けの見本市を日本は実施してますが武器の本格的な見本市は今回が初めてになります。もちろんながら海外に何回か出展している企業もありますがそれでも数として海外企業と比べてやはり少ない。また主催者側としてのノウハウはほぼゼロに等しく、防衛産業の維持と活性化のためにはこれからも継続的にこの手の見本市の存在が非常に大切なものになりますが、そのノウハウ獲得のために大きな意義があったと思います。DSEI自体はロンドンで元々活動していましたからその手のノウハウは多くありますし規模も本家の方が大きいです。ノウハウを日本が享受してもらうにはこれほど良い相手もいません。その点では今回はとてもよかったのではないでしょうか。

一方で課題も見えたようで

 と河野防衛大臣twitterでコメントを残しています。ここら辺のノウハウが今後の日本の課題になることは間違いないでしょう。

商談のため

つまんない話ですがこれも大きいです。さっきと言ってること違うじゃねーかと思ったあなた、あなたは正しい。

ただ、日本に関してだけ言えばこの商談も見本市がなくても進みそうなものがわりかし占めているので最初のウウェイトの方を重めにしているわけです。言ってみれば商談のポーズと言うべきでしょうか。例えば軽装甲機動車の後継がブースで模型で出てましたが、この入札を見本市前にしてますので商談そのものと言うよりは喧伝のためと言う方が正しそうです。しかし、これはあくまで日本に対してと言う話で他国に対しては製品の宣伝をすることもありますし、商談の機会として機能もするでしょう。また三菱のMAVのような少ないですが独自開発の製品に関しては自衛隊が必ずしも関わる訳ではないですから、生き残り戦略として出展する場合はやはり商談を求める形になると思います。ですが、やはりメインは連携先の模索と情報の共有なのかなと思います。

www.shephardmedia.com

話は変わって…

そう言えばDSEIに限らず、日本が軍需に関係するものに参加すると出てくるのが死の商人と言う言葉です。武器を売ればそれを使って人を殺す。したがって日本がそんなことをするのは平和の精神に違反するからやめるべきだと言うものです。

正直これはこれで正しいです。綺麗な平和を求めるならこれほど正しい言葉はありません。なぜなら、兵器が移転可能な製品である以上第三国へ輸出されてテロリストや戦争国に渡って戦争激化の一翼を加担する可能性は常にあります。

しかしながら、実際問題として我が国の軍需産業は日に日に厳しいものになっており、また近隣諸国に限らず世界全体で軍拡傾向である以上、我が国は衰退を迎えながら一定レベルを維持しなければ世界のミリタリーバランスが崩れ世界が平和から遠のく可能性があります。そのためには製品を安くしつつ、国際レベルで協調することで我が国の負担を減らさなければなりません。

 

jp.sputniknews.com

また、日本の国際的地位が下がる時代において兵器の輸出は大きな意味を持ちます。兵器は購入や保有そのものが大きな外交カードになります。独自保有なら北朝鮮、輸入ならトルコがわかりやすい例だと思います。これは現在の日米においても発生し、相手国を大小異なりますが影響を与え、コントロールをすることができる訳です。

また、本来死の商人とは陣営問わずに武器を売り、戦争の長期化を望む人たちのことを指し、武器商人そのものを含んではいません。さらに武器の輸出そのものは国連憲章に基づく武器貿易条約において規制はされていません。規制されているのはあくまで不正な手段による武器の取引です。したがって武器輸出は国際法的に認められたものであり平和国家としてのあり方そのものを否定はしません。(そもそも現在の主権国家は平和国家をおおよそ標榜してます)

平和は確かに大切ですが、きちんと政府・法執行機関に向けたDSEIに対して言うのは少し違うといったところで締めたいと思います。