よろず夜話

軍事や自衛隊を多めにしつつ色々な話をするブログ。話の正確性は6割ほど、力を抜いた話ができるようにしたいです。アイコンは陸上自衛隊HPより引用

MRJ(三菱スペースジェット)はどうなるか

忙しい期間がなんとかひと段落したためにブログを再開しようと思います。具体的にいつまで忙しいか分からなかったためにお知らせすることなく、ブログ更新を止めていてすみませんでした。

 

さて今回はなかなか良いニュースが見つからなかったので、少し軍事から離れて民間旅客機のMRJ、現在三菱スペース・ジェットと呼ばれています。最近の日本の製品って名前ダサくするのが流行りなんですかね?

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wikipediaより MRJ

 

今年で本来竣工する予定でしたが、今年の一月に6度目の延期となると報じられており、2020年の導入は絶望的になっています。

mainichi.jp

 

正直なところ、初期の納入から10年近く延期することは最近の航空業界は延期が多いものの長い部類になると思います。例えば、延期やら不調で有名となったB787ですが納入までの延期期間は三年ほどであり、その後の飛行停止も半年から一年の間に落ち着いています。軍用機になるもののエアバスのA400Mも遅延が有名ですが、これも納入まで4年延期となっています。

 

この長い延期で度々耳にするのは三菱は国に守られていた親方日の丸であるから失敗した。国が支援するようなものは国から補助金をもらうためであったなど言われます。

実のところ三菱重工は造船部門が伸び悩み、原発事故以降は原発の原子炉の製造が大幅に減速するなどやや厳しい状態ではあるものの、グループには三菱UFJ銀行を筆頭に巨大な企業グループを形成していることから危機意識が弱いのではないかといった批判も目立ちます。

 

しかしながら、同重工は核融合発電の国際的な計画の一部に参加して技術力を誇示、赤字気味な造船部門も今治造船からの委託業務に就いたり、長崎造船所を売却するなど会社の危機意識が欠けているといった指摘は必ずしも正しいとは思えません。もちろん航空機の胴体の製造などのちょっとした実績からくる慢心はあったと思いますが、この危機意識の部分がMRJ開発の障壁になったと結論づけるのは早計だと考えます。

また、補助金の話も経産省からもらった補助金20億円に対して、開発費は少なくとも3300億円となっており、補助金をもらうメリットが皆無どころか当初試算でも1200億円と補助金は雀の涙くらいでしかありません。

www.asahi.com

 

では何が問題となったのか?なんの根拠もありませんが、胴体や翼といったパーツがきちんと作れても全体をきちんと作るノウハウが無く、求められるレベルの差異に気づけなかったのではないかということです。

 

三菱は以前から国産の航空機を作っています。MH2000がその代表ともいえます。このMH2000はエンジンからガワまで全て自社で設計したものを載せるという意欲作でしたが、大口顧客が出ることはなく7機の生産で終わりました。

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wikipediaより MH2000A

他にも各種戦闘機などを生産してきましたが、これらはどれも旅客機と比べると小型で大型機の生産は丸々全てを請け負ったことは実は少なかったりします。無論、現在の川崎重工のP-1・C-2の分担生産はしてますが、やはりこれも一から作ったわけではありません。やはりノウハウが足りない訳です。

 

サッカーで例えるなら、リフティングやランニングといった基礎練は積んできたわけですし、基礎練と並行してバレーやバスケなんかもしているもののサッカーの試合そのものはほとんどやってこなかった訳です。ただし、バレーやバスケは求められるレベルには達しているので持ち前の才能と基礎力でなんとか乗り切ろうとしたがダメだった、と言った感じでしょうか。

 

スポーツに限らず、人間何かしらこういった経験はあるのではないでしょうか。それが企業レベルで発生したことが現在まで続く延期の正体なのではないでしょうか。特に三菱は米国兵器のライセンス生産ボーイングからパーツ生産の能力を評価されていたことが慢心に拍車を掛けたのだと思います。

www.mhi.com

 

もちろん、この部分を指摘するメディアは存在しましたが他部門が損失を出している状況ゆえにただの企業体質の問題とされることも多かった訳です。三菱からすれば得意分野で評価されていると思っていた分野の一つであったのでショックではあったと思います。

 

理由は他にも航空産業は現在のところ中型のリージョナルジェットクラスですとカナダのボンバルディア(現在三菱航空機の子会社)とブラジルのエンブラエルの寡占化が進んでいる分野であり、ここでシェアを握るには他の2社よりも革新的でなければならず、これが航空機製造に慣れない三菱にとってはプレッシャーであったと考えられます。なぜなら、2社の製品よりも目立って優れていなければ買う理由は全く無いのです。そのため慣れないにも関わらず、世界でもトップクラスの燃費を誇る機体を作ることになり無理が出たんじゃ無いかなと考えます。

 

とはいうものの、エンジニアのインタビューの話があまりネットに出回らないせいか部外者の私たちでは全く全容が見えてきません。これがまたMRJへの不信感へと繋がっている部分はあると思います。これは開発が終わってないために仕方ないことではありますが、伝わる話は全て延期の噂とキャンセルの話、如何に失敗しているかの話に溢れており、全く希望が持てないのも事実です。一航空ファンとしてはなんとかはっきりとした展望が見えて欲しくあります。

 

ちなみに一説には、B737MAXの墜落事故が相次いだせいでFAAの航空機の型式証明の審査が厳しくなったために安全面の部分の許可がおりないのでは無いか?なんてことも言われています。

 

最後に、三菱航空機自体は6回目の延期報道は全て否定しているので6回目の延期の部分でとやかく言うのは実はまだ不適であったりします。下の市場は応援の意を込めていつもより多めに置いておきます。

 

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一橋ビジネスレビュー 2018年SPR.65巻4号: 次世代産業としての航空機産業

一橋ビジネスレビュー 2018年SPR.65巻4号: 次世代産業としての航空機産業